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沖縄発のプロダクトで価値を創造。ITを軸に社会課題の解決に挑む。

株式会社レキサス
代表取締役社長 比屋根 隆

更新日:2021年10月27日

1974年2月26日生まれ。沖縄県那覇市出身。沖縄国際大学商経学部卒業。大学在学中に起業し、ITサービスの提供を開始。1998年に株式会社レキサスを創業。2008年に県内学生向け人財育成プロジェクト「IT frogs(現在はRyukyufrogs)」を立ち上げ、2017年に株式会社FROGSへ引き継ぐ。2018年に社会課題の解決を目指す株式会社うむさんラボを創設するなど、人財育成・起業家支援に継続して取り組んでいる。沖縄県の「稼ぐ力に関する万国津梁会議」委員。SDGs達成に向け企業・団体が連携するプラットフォーム「OKINAWA SDGsプロジェクト(OSP)」の企画・運営なども務める。(所属・役職等は取材時点のもの)

IT業界や経営層の「当たり前」を変えたい

株式会社レキサスは1998年、世界で利用されるITサービスやプロダクトを沖縄から創造することを目指し、創業しました。ミッションは「沖縄から、社会をより豊かにする人財や事業を創出し続ける」。社名には、「琉球(レキオ)の心」を大切にしながら、沖縄を拠点にグローバルなビジネスを展開して「成長(サクセス)させる」という意志を込めて、「レキサス(Lexues)」と名付けました。

沖縄にもソフトウエア開発を担う会社はありましたが、首都圏からの下請け的な仕事が多く、発注理由も「安いから」というケースが少なくありませんでした。沖縄のビジネスを取り巻く屈辱的で悔しい現実を、何度も目の当たりにしてきました。「コストが安いから沖縄に発注する」。そんな業界の「当たり前」や、経済界の意識、何よりも沖縄を変えたい、と強く思うようになりました。レキサス創業のきっかけです。

下請けではなく自分たちでマーケットをつくる、東京と同じ単価で受託できるサービスを提供するー。そして、沖縄が真に自立するために、「基地関連収入と同等の外貨を稼ぐ事業を創る」という長期的なビジョンも掲げました。学生時代にITビジネスを起業した経験もあって、新しいサービスを生み出して提供するマーケットにも可能性を感じていました。

三つのフェーズで成長、変化するニーズに応え続ける

当社は創業から23年、3つのフェーズで成長してきました。第1期の1998年から2000年代は主に、自社で開発したプロダクトがヒットして全国展開を果たすことができました。首都圏の証券会社やテレビ会社などと直接契約できたことも大きな成果です。2010年代の第2期は、異業種から「課題を解決したいが、どうすればいいか」という相談を受け、一緒にプロダクト化する案件が増えました。例えば、作業療法士と共同開発したアプリ「ADOC(エードック)」は海外からローカライズについての問い合わせを複数いただくなど、沖縄発グローバル展開の可能性を感じました。またウェディング業界向けのクラウドサービス「PhotoBridge(フォトブリッジ)」は国内シェアトップで海外展開も狙えるステージにきています。それぞれ手応えを感じた段階でレキサスも出資して株式会社化するなど、異業種連携によるプロダクトを全国展開できました。

第3期の現在は、「社内のメンバーが起業に挑む」という新たなステージです。具体的には、AIやIoT部門を率いてきた大西敬吾さんが2017年8月にLiLz(リルズ)株式会社を設立。同年9月には人財育成事業「Ryukyufrogs」をけん引してきた山崎暁さんが株式会社FROGSとして独立。私自身も2018年10月、沖縄の社会課題の解決に挑む株式会社うむさんラボを新たに立ち上げました。近年のもう一つの動きは、お客様の新規事業をつくる仕事が増えたことです。我々が培ってきた「ゼロからイチを生み出す」経験を生かし、お客様に伴走して新規事業を創出するお手伝いをしています。

SDGsにつながるU・Iターン人材の活躍

地方でイノベーションをつくろうとした時に「よそ者、若者、バカ者」の存在はとても大事です。その意味でU・Iターン人材の採用は創業時から重視してきました。現在は社員の4割程度がU・Iターン人材。ビジョンやミッションに共感し、課題も理解してもらった上で「一緒にチャレンジしたい」と言ってくれたメンバーです。

我々は県外の仕事も多いため、首都圏のマーケットやクライアントのニーズ、スピード感、クオリティが求められます。前述の大西さんと山崎さんも県外からのIターン採用でしたが、彼らを含め何人ものU・Iターン人材が東京レベルのスキルを持ち込んでくれたおかげで、社内だけでなく沖縄全体にも良いインパクトを与えてくれています。広く発信力がある人材はもちろん、目立たないけれどクライアントワークでお客様の満足度を高めるエンジニア、社内の基盤づくりに貢献してくれる全国クラスのプロジェクトマネージャーもいます。

国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、首都圏と地方の格差を埋めることが求められる時代です。首都圏でスキルを磨いた人材が地域の豊かさを再発見して、ビジネスや事業を通して持続可能な地域経済をつくることは、日本の未来に貢献することにもつながります。

社会課題の解決はビジネスの信頼につながる

SDGsにつながる動きとしては2021年4月から、沖縄のシングルマザーのWeb業界就業プロジェクト「MOM FoR STAR(マム フォー スター)」を始めました。ポイントは首都圏のデジタルデザイン企業フォーデジットさんと連携していることです。約3カ月の研修プログラムを終えた後には、東京単価で仕事が発注される枠組みです。

きっかけは2020年、私が登壇した県の企業誘致セミナーでした。「安いからという理由ではなく、沖縄の社会課題を一緒に解決しませんか」という私の呼びかけに、フォーデジットさんが応えてくれたのです。企業が社会課題の解決に取り組むことは今後、企業価値を高め、「選ばれる理由」にもなります。そのトレンドは国内でも既に始まっています。

人財育成事業「Ryukyufrogs」が生み出す好循環

創業時からU・Iターンを重視してきましたが、それだけではいつまでたっても県内の人材は育ちません。そこで2008年、沖縄の学生を対象とした人財育成事業「ITフロッグス」(現在のRyukyufrogs。以下フロッグス)をスタートしました。当時、沖縄では学生の多くが安定志向で、県外や海外を目指す学生が少なかったんです。「このままでは沖縄の未来を拓くことはできない。IT業界だけでなく、沖縄県全体の課題だ」。そんな危機感から、県内企業や経営者に「沖縄の若者を支える環境をつくりたい。未来に投資しませんか」と呼び掛け、民間主導で続けてきました。

この取り組みは2021年で13年目になります。10年目あたりから社会で活躍するOB・OGが増えてきました。沖縄に貢献できる人材になりたいと、県外や海外にチャレンジする人材も増えています。こうした沖縄発の人材育成モデルが、茨城や北海道、高知にまで広がっていることも喜びです。フロッグスのもう一つの成果は、県外・海外の第一線で活躍している素晴らしい人材が沖縄を応援してくれるようになったことです。講師としてフロッグス生を支援してもらった投資家が、今では沖縄のスタートアップに個人で投資してくれるなど、沖縄全体にネットワークが広がっています。

「株式会社沖縄県」という視座で、沖縄から世界へ

レキサスを創業したのも、フロッグスを始めたのも、「沖縄をより良く変えていきたい」という思いからです。それは1年2年で結果が出る話ではなく、長期的な視野が必要です。行政や様々なコミュニティとの連携など、セクターを越えたつながりも大切です。つまり、自分たちが「株式会社沖縄県」を経営する感覚で、自分たちには何が出来るのかという視点です。

我々は今、2030年に向けて新しい動きを始めています。社内で再び「自社サービスをつくろうよ」という機運が高まり、メンバーと共にチャレンジしている最中なのです。農業なのか介護・医療・福祉分野なのか、あるいは観光事業なのか、それは分かりません。こだわりたいのは「グローバル」。世界で広く役立つサービスをつくって外貨を稼ぎ、沖縄の自立発展につながる一つの象徴的なサービスになる、そんなイメージです。2023年には新たなレキサスがスタートする予定です。

沖縄の社会課題は、世界が抱える課題とつながっています。沖縄発のサービスで世界に貢献し、沖縄が世界から必要とされる立ち位置になる、その手段としてのレキサスです。新生レキサスに向けては、クライアントワークが得意な人材、自社プロダクトを企画からディレクションまで創出できる人材の両方が必要です。どちらもできて橋渡しができる人材がいればベストです。単にお客様の話を聞くだけじゃなく、自らも参画して「こういう風にしましょう」と提案や要件定義できることは、エンジニアにもデザイナーにも今後は必要な力です。レキサスのこれまでの取り組みも含めて、ビジョンやミッションを共有できる人材と一緒に、新たなチャレンジを続けていきたいです。

(取材協力:ノボテル沖縄那覇、取材担当:佐藤ひろこ)

編集後記

コンサルタント
島村 賢太

レキサスの比屋根社長といえば、沖縄県内におけるITベンチャー経営者の草分け的な存在です。 県内では珍しい全国的なプロダクトを持つITベンチャーを経営しながら、沖縄の社会課題に取り組む比屋根社長。「沖縄をより良くしたい」という、その高い志で県内の様々なステークホルダーを巻き込みながら、 これまでにない取組を展開されていらっしゃいます。まさに株式会社沖縄を体現されていらっしゃる方です。 県内のITをはじめとした若手経営者達は、比屋根社長を私淑しその背中を追っている人も多いのではないかと思っております。 私もその中の1人でして、微力ながら株式会社沖縄の採用担当となれるよう日々、精進して参ります。

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